研究のポイント
細胞内のタンパク質はその大部分は細胞質で合成されますが、ごく一部のタンパク質はエネルギー産生等を司る細胞内小器官であるミトコンドリアにおいても合成されます。このミトコンドリアでのタンパク質合成は主にエネルギー産生に関与していると考えられてきました。
今回、熊本大学国際先端医学研究機構(IRCMS)の森嶋達也特任講師(IRCMS若楠研究者)、滝澤仁教授らの研究グループは、東北大学、分子生物学研究所(ドイツ)などとの共同研究で、ミトコンドリアにおけるタンパク質合成を司る酵素であるミトコンドリアtRNA修飾※1酵素MTO1の欠失マウスを用いた研究により、ミトコンドリアでのタンパク質合成が阻害されると細胞内の鉄の分布異常が起こり、結果として胎児期に致死的な貧血を引き起こすことを発見しました。本研究成果は、貧血をはじめとする鉄が関与する疾患の理解とこれらに対する新規治療法の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、令和7年2月21日に学術雑誌「Science Advances」に掲載されました。
※本研究成果は、日本学術振興会外国人研究者招聘事業(外国人特別研究員、18F18408)、科学研究費助成事業(18K16124、22K19548)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)創発的研究支援事業(JPMJFR200O)、公益財団法人先進医薬研究振興財団、公益財団法人東京生化学研究会(現:公益財団法人中外創薬科学財団)、一般財団法人化学及血清療法研究所、公益財団法人持田記念医学薬学振興財団、一般社団法人日本血液学会、熊本大学健康長寿代謝制御研究センター、Joachim Herz Stiftung、Deutsche Forschungsgemeinschaft (DFG)の支援により得られたものです。
【展開】
今後は出生後にMto1遺伝子を欠失させる新たなマウスモデルを作製し、成体の血液産生におけるミトコンドリアタンパク質合成を詳細に解析する予定です。鉄は生体にとって必須の金属である一方、過剰になると毒性を示します。本研究は貧血をはじめとする鉄関連疾患の病態に、ミトコンドリアにおけるタンパク質合成の異常が関与している可能性を示唆しており、これらの疾患の理解を深めるととともに、新たな治療法につながることが期待されます。
用語解説
※1RNA修飾:DNAから転写された後、RNA上にメチル基やアセチル基とい った様々な”飾り”となる分子が付加されることによりRNAの構造や機能が変化します。新型コロナウイルスワクチンの実用化に貢献したとして2023年のノーベル生理学・医学賞がRNA修飾の研究に授与されました。【論文情報】
(†Equally contribution, *責任著者)
【詳細】プレスリリース(PDF283KB)

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熊本大学 研究