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大阪大学 研究Discovery Saga
2025年2月19日

二次元材料上で二酸化バナジウムの超薄膜化に成功!

安価で柔軟な次世代エレクトロニクス用材料の合成技術

【持続可能な開発目標(SDGs)】
2025-2-19●工学系産業科学研究所教授田中秀和

発表のポイント

  • フレキシブル性を有する二次元材料上に、新たな半導体材料として期待される二酸化バナジウム(VO2超薄膜材料の合成に成功
  • VO2など酸化物材料の超薄膜化は、特性の劣化のために半導体デバイスとして動作させることが困難な上、安価に供給できないことが課題だった
  • 合成された材料は、どこにでも貼り付け可能なフレキシブル性により、センサやデバイスへの応用など次世代エレクトロニクス用材料として半導体産業での展開が期待される
  • 発表概要


    大阪大学産業科学研究所の余博源さん(大学院基礎工学研究科博士後期課程)、田中秀和教授、物質・材料研究機構の渡邊賢司博士、谷口尚博士らの研究グループは、二次元材料のひとつである六方晶窒化ホウ素(hBN)の上に、パルスレーザ蒸着法を用いて二酸化バナジウム(VO2)の薄膜結晶を成長させ、その厚さを薄くしても性能が劣化せず、約10ナノメートルの超薄膜においても良好なスイッチ特性を示すことを世界で初めて明らかにしました。
    パソコンやスマートフォンなどに用いられ、私たちの生活を支えるシリコン半導体デバイスは、微細化によって高速化や省電力化が進められてきましたが、その微細化にも技術的な限界が迫っています。
    酸化バナジウムなどの酸化物は、従来の半導体材料とは異なった機構を有し、巨大なスイッチング動作が可能な材料として知られており、今後シリコン半導体の微細化が限界を迎えた後、ナノスケールでも利用できる材料としても期待されています。しかしこれまで、このような酸化物材料の超薄膜化は、同一の結晶構造を有する、特殊かつ高価な材料上のみで可能であるとされ、一般的な用途への展開に対し大きな障害となっていました。
    本研究成果により、次世代エレクトロニクス用材料として期待される酸化物量子材料の自由自在なナノスケール化が実現し、どこにでも貼り付け可能でフレキシブルな性質によってセンサやデバイスの作製が容易になるなど、半導体産業において新しい用途開拓が期待されます。
    本研究成果は、応用物理学会欧文誌『Applied Physics Express』に、2月10日(月)(日本時間)に公開されました。

    図1. フレキシブルhBN上のVO2超薄膜材料の模式図

    研究の背景


    酸化バナジウムなどの酸化物は、従来の半導体材料とは異なった機構で、巨大なスイッチング動作が可能な「強相関量子材料」として知られています。今後、シリコン半導体の微細化が限界を迎えた後、その超巨大物性を利用して、ナノスケールでも利用できる新たな半導体材料になりうることが期待されています。
    これまで、このような酸化物材料の超薄膜化は、類似の結晶構造を有する特殊かつ高価な、限定された基板材料上でのみ可能であり、その限られた場合でも、二つの異種材料間の界面に生じるわずかな結晶構造の違いから生じる“歪み”のために、薄くするとその特性が急激に劣化することが知られていました。この為、材料を薄くすることが必須な半導体デバイスとして動作させることが困難なこと、および安価に一般に供給できないことが問題でした。

    研究の内容


    今回、物質・材料研究機構グループにより提供された六方晶窒化ホウ素(hBN)は、原子一層のシートとしても剥離できることで有名なグラフェンと同じ六方格子からなる二次元材料のひとつです。その原子的に平坦なシート状の表面にはファンデルワールス結合と呼ばれる非常に弱い結合力しか存在せず、いわば非常に“柔らかい”表面を持っているといえます。これはセラミックスとしても利用される酸化物材料の持つ、強い共有結合イオン結合とは大きく異なります。この“柔らかい”hBNの表面では、異なる材料を組み合わせても無理な歪みが入ることなく、界面での歪みを緩和して酸化物材料が成長していくであろうと考えました。
    研究グループは、パルスレーザ蒸着法を用いて、いろいろな厚さを持った薄膜を作製し、そのスイッチング特性を評価したところ、厚さを薄くしても劣化せず、10ナノメートル(1メートルの1億分の1)の厚さでも良好な性質を示すVO2超薄膜の成長に成功しました。柔らかい有機材料間の積層構造はよく知られていますが、今回のような“柔らかい”二次元材料上への“固い”無機強相関量子材料の直接の積層成長は、新たな界面物理現象を開拓する可能性を有しています。

    図2. さまざまな厚さを持ったhBN単結晶上のVO2超薄膜のラマン・スペクトルと光学顕微鏡像

    本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)


    六方晶窒化ホウ素は、その柔らかい表面のために、次世代エレクトロニクス用材料として期待されるさまざまな酸化物量子材料を自由自在にナノスケール化して、デバイスへの応用を可能にします。また、どこにでも貼り付け可能でフレキシブルな性質を利用して、ナノセンサやナノデバイスの作製など新しい用途をもたらし、トリリオンセンサ、ユビキタス社会の発展に寄与することが期待されます。

    特記事項


    本研究成果は、応用物理学会欧文誌『Applied Physics Express』に、2月10日(月)(日本時間)に公開されました。
    タイトル:“Strain-free thin film growth of vanadium dioxide deposited on 2D atomic layered material of hexagonal boron nitride investigated by their thickness dependence of insulator–metal transition behavior”
    著者名:Boyuan Yu, Shingo Genchi, Kenji Watanabe, Takashi Taniguchi and Hidekazu Tanaka
    DOI:10.35848/1882-0786/adaf09
    なお、本研究は、JSPS科研費 学術変革領域研究(A)「2.5次元物質科学」、大阪大学先導的学際研究機構スピン学際研究部門研究の一環として行われました。

    参考URL


    田中 秀和 教授 研究者総覧
    https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/965b692969a7c80b.html

    SDGsの目標