がんのバイオマーカー“フコシル化ハプトグロビン”の 生物学的機能を解明
マクロファージ上のC型レクチンを介して炎症反応を引き起こす
【持続可能な開発目標(SDGs)】
2025-2-18●生命科学・医学系医学系研究科教授三善英知
発表のポイント
発表概要
大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻の三善英知教授は、大阪大学微生物病研究所の山﨑晶教授(免疫学フロンティア研究センター(IFReC)/感染症総合教育研究拠点(CiDER)/先端モダリティ・ドラッグデリバリーシステム研究センター(CAMaD)兼務)、広島大学大学院統合生命科学研究科の中ノ三弥子准教授、忠南大学校のEun-Kyeong Jo教授、浦項工科大学校のSeung-Yeol Park教授らのグループとの国際共同研究によって、糖鎖がんバイオマーカーの1つであるフコシル化ハプトグロビンの生物学的機能(フコシル化ハプトグロビンが具体的に体内でどのように働くのか)を世界で初めて明らかにしました。
これまでフコシル化ハプトグロビンはがんや炎症のバイオマーカーとして多数の論文が国内外で報告されてきましたが、その生物学的機能は不明でした。今回、研究グループは多くの敗血症患者の血中フコシル化ハプトグロビンが著増することに注目し、細胞実験/動物実験やシングルセル解析を行いました。その結果、フコシル化ハプトグロビンが単球上のMincleというC型レクチン受容体を介して、敗血症の炎症状態を悪化させるメカニズムを明らかにしました。フコシル化ハプトグロビンは単なるがんや炎症のバイオマーカーだけでなく、敗血症治療の標的となる可能性があります。
本研究成果は、米国科学誌「Nature Communications」に、2月4日(火)に公開されました。
図1. 敗血症におけるフコシル化ハプトグロビンの生物学的機能
研究の背景
糖鎖は、タンパク質に付加される重要な生体分子の1つで、がん細胞と正常細胞でその構造が大きく異なるため、腫瘍マーカーとして使われています。フコシル化ハプトグロビンは、2006年に三善教授らが新しい膵臓がんの糖鎖バイオマーカーとして発見したものです。2008年には糖鎖結合部位特異的糖鎖構造解析法により、膵臓がん患者の血液中のハプトグロビンのフコシル化の位置と量を明らかにしました。その後、国内外の研究者によって、フコシル化ハプトグロビンはがんや炎症のバイオマーカーとして多数の論文が国内外で報告されてきましたが、その具体的な生物学的機能は不明でした。研究の内容
Eun-Kyeong Jo教授、Seung-Yeol Park教授らのグループは、フコシル化ハプトグロビンが多くの敗血症患者の血中で増加することを発見しました。また、三善教授、中ノ准教授らは、ハプトグロビンのフコシル化の位置と量を糖鎖結合部位特異的糖鎖構造解析法により明らかにしました。
単球をハプトグロビンとフコシル化ハプトグロビンで刺激すると、フコシル化ハプトグロビンによって炎症性のサイトカインやインフラマソームの発現が増加することがわかりました。さらに、フコシル化ハプトグロビンが、単球上の受容体であるC型レクチンの1つであるMincleと結合することも明らかにしました。Mincleは、1999年山﨑教授らによって発見されたもので、本研究におけるフコシル化ハプトグロビンとMincleのシグナル解析に山﨑教授は大きく貢献しました。
フコシル化ハプトグロビンが高い敗血症患者は予後が悪く、マウスにフコシル化ハプトグロビンを投与するとin vitroで認められたのと同様に、炎症性のシグナルが増加することを確認しました。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本研究成果により、これまでがんや炎症の単なる診断マーカーとして考えられてきたフコシル化ハプトグロビンに、生物学的な機能を持つことが初めて証明されました。こうしたケースは腫瘍マーカーにおいても前例が非常に少なく、フコシル化ハプトグロビンが敗血症のような高度の炎症病態の治療標的になり得ることが期待されます。
特記事項
本研究成果は、2025年2月4日(火)に米国科学誌「Nature communications」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Fucosylated haptoglobin promotes inflammation viaMinclein sepsis: an observational study”
著者名:Eun-Kyeong Jo, Taylor Roh, Sungeun Ju, So Young Park, Yeonghwan Ahn, Jiyun Chung, Miyako Nakano, Gyoungah Ryu, Young Jae Kim, Geumseo Kim, Hyewon Choi, Sung-Gwon Lee, In Soo Kim, Song-I Lee Lee, Chaeuk Chung, Takashi Shimizu, Eiji Miyoshi, Sung-Soo Jung, Chungoo Park, Sho Yamasaki, and Seung-Yeol Park
DOI:https://doi.org/10.1038/s41467-025-56524-3
参考URL
三善英知教授 研究者総覧
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/f8d84ecfce5b1e28.html
SDGsの目標

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